一般事業主行動計画の義務と最新変更点!くるみん認定の条件と手順
企業の労務管理や採用戦略において、避けて通れない重要課題となっているのが「一般事業主行動計画」の策定です。少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化する中、次世代育成支援対策推進法(次世代法)および女性活躍推進法(女活法)に基づく取り組みは、単なる法令遵守にとどまらず、優秀な人材を引きつけるための企業ブランディングの中核を担っています。
しかし現場の人事労務担当者からは、「自社がいつから義務化の対象になるのか」「次世代法と女性活躍推進法で何が違うのか」「実効性のある目標設定はどう進めるべきか」といった戸惑いの声が後を絶ちません。本稿では、最新の法改正動向を踏まえ、策定義務の判定基準から具体的な作成手順、公表方法、さらには「くるみんマーク」「えるぼし」認定の取得要件まで、実務に即して徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:常時雇用労働者数101人以上の企業は、次世代法・女性活躍推進法の双方で行動計画の策定・届出・周知・公表が法律上の義務。
- 要点2:計画策定は「現状分析→目標設定→社内周知・公表→都道府県労働局への届出」の4ステップで進め、厚生労働省の公表サイト登録が必須要件。
- 要点3:行動計画の達成はくるみんマーク・えるぼし認定や両立支援等助成金の支給要件と直結し、採用力強化と企業価値向上に寄与する。
【2026年最新】一般事業主行動計画の策定義務と対象企業の判断基準
一般事業主行動計画とは、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境整備や、女性労働者の活躍推進を目的に策定する具体的な数値目標と取り組み内容を盛り込んだアクションプランです。根拠となる法律は主に「次世代育成支援対策推進法」と「女性活躍推進法」の2つが存在し、それぞれ対象要件や義務付けられている内容が異なります。
自社が策定義務の対象となるか否かを判断する最大の境界線は、「常時雇用する労働者数101人以上」という規模基準です。このカウントには正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員であっても「期間の定めのない雇用契約の者」または「1年以上継続して雇用されている、もしくは雇用が見込まれる者」が含まれます。労働局の監査・指導現場でも、非正規雇用の算定漏れによって「知らぬ間に101人を超えており義務違反になっていた」というケースが頻発しているため厳格な集計が求められます。
なお、労働者数100人以下の企業については現在のところ「努力義務」と位置づけられていますが、次世代法の有効期限延長や情報公表義務の段階的拡大など、近年の法改正動向は中小企業への適用拡大を見据えた流れが強まっています。企業間取引(BtoB)のサプライチェーン評価やESG投資の観点からも、企業規模を問わず早期の対応が求められる局面に入っています。

【比較検証】次世代法と女性活躍推進法の違いと求められる対応
人事担当者が最も混乱しやすいのが、次世代法と女性活躍推進法における行動計画の違いです。両者は目的や義務内容、情報公表のルールに明確な差があります。厚生労働省のガイドラインに基づき、両法の違いを詳細に整理しました。
| 比較項目 | 次世代育成支援対策推進法(次世代法) | 女性活躍推進法(女活法) | 実務上のチェックポイント |
|---|---|---|---|
| 主たる目的 | 仕事と子育ての両立支援、次世代を担う子どもが健やかに生まれる環境整備 | 女性の個性と能力の発揮、採用・昇進における男女間格差の是正 | ターゲットとアプローチが異なるため一体型で策定する際も区分が必要 |
| 義務対象規模 | 常時雇用労働者 101人以上(100人以下は努力義務) | 常時雇用労働者 101人以上(100人以下は努力義務) | 301人以上企業は女活法において情報公表の義務項目が拡大 |
| 数値目標の設定 | 目標設定は必須(育休取得率、残業削減など) | 1つ以上の数値目標を設定することが必須 | 女活法では「定性的」な目標のみは不可。必ず具体的数値を設定 |
| 自社の状況把握・課題分析 | 努力義務(実施が強く推奨される) | 必須義務(基礎項目4項目の分析が前提) | 採用比率・勤続年数格差・労働時間・管理職比率の把握が必須 |
| 目指せる公的認定 | くるみん/プラチナくるみん | えるぼし/プラチナえるぼし | 認定取得により求人票へのロゴ掲載や公共調達の加点対象に |
【実務直結】失敗しない策定ステップと目標設定の具体例
一般事業主行動計画の作成は、適切なプロセスを踏むことで形骸化を防ぎ、社内の労働環境改善へダイレクトに繋げることができます。厚生労働省が提示する標準ステップに沿って解説します。
ステップ1:自社の現状把握と課題分析
女性活躍推進法においては、①女性採用比率、②男女の平均継続勤務年数の差異、③月別平均残業時間などの労働時間、④管理職に占める女性比率の4項目の分析が義務付けられています。次世代法においても、直近3事業年度における男性の育児休業取得実績や有給休暇取得率を正確に算出します。
ステップ2:行動計画の策定(計画期間と目標設定)
計画期間は実務上、2年間から5年間程度で設定するのが一般的です。厚生労働省のひな形様式を活用しながら、「定量的で達成状況が測定できる目標」と「具体的な実施時期・取組内容」を記述します。
【目標設定の具体例】
- 次世代法関連:「計画期間内に、男性従業員の育児休業取得率を50%以上にし、育休取得希望者に対する個別面談体制を構築する」
- 女性活躍関連:「新卒採用における女性比率を40%以上に引き上げるとともに、係長級以上の女性役職者を現状の5名から10名以上に倍増させる」
- 労働環境改善:「年次有給休暇の一斉取得日を四半期ごとに設定し、全社員の年間取得日数を平均14日以上とする」
ステップ3:社内周知と外部公表
策定した行動計画は、社内イントラネットへの掲示や書面配布を通じて全従業員へ周知します。さらに外部への公表として、厚生労働省が運営する「一般事業主行動計画公表サイト」(女性活躍推進法の場合は『女性の活躍推進企業データベース』)に登録・掲載します。自社コーポレートサイトのサステナビリティ・採用ページへの掲載も有効です。
ステップ4:都道府県労働局への届出方法
策定後は速やかに、本社所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ届出を行います。届出様式(一般事業主行動計画策定・変更届)に必要事項を記入し、窓口持参、郵送、または「e-Gov」による電子申請で提出します。不備がなければ受理印が押印された控えが交付されます。

【実態検証】人事労務担当者の生の声と「形骸化」を防ぐ現場の知恵
SNSや労務コミュニティにおいて、実務担当者から最も多く聞かれるのは「計画を策定して労働局へ提出したものの、現場の管理職が非協力的で施策が全く進まない」という悩みです。特に「男性育休の取得目標を掲げたが、現場から『人手不足なのに無理だ』と反発された」という声は根強く存在します。
計画の形骸化(ペーパープラン化)を防ぎ、実効性を高めている先進企業には明確な共通点があります。それは、行動計画を人事部内だけで完結させず、経営会議でのコミットメント獲得と現場マネジメント層の評価制度への連動を行っている点です。育休取得や残業削減を「現場の負担」とするのではなく、管理職のマネジメント評価項目(KPI)に組み込むことで、組織全体を巻き込む推進力を生み出しています。
くるみん・えるぼし認定のメリットと両立支援等助成金の活用術
一般事業主行動計画を策定し、設定した目標を達成した企業は、申請により厚生労働大臣からの認定を受けることができます。これらは企業の社会的信用力を飛躍的に向上させる強力なインセンティブです。
1. くるみんマーク・プラチナくるみん認定
次世代法に基づき、行動計画に定めた目標を達成し、男性の育休取得率(省庁基準:配偶者出産休暇を含む取得率など所定の条件を満たすこと)やフルタイム労働者の時間外労働制限などの厳格なくるみんマーク認定基準をクリアした企業に付与されます。さらに高水準な取り組みを継続する企業には「プラチナくるみん」が授与されます。
2. えるぼし・プラチナえるぼし認定
女性活躍推進法に基づき、採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職比率、多様なキャリアコースの5つの評価項目について、達成段階に応じて1段階から3段階の「えるぼし」、最高峰の「プラチナえるぼし」が認定されます。
3. 両立支援等助成金の支給要件との連動
中小企業にとって極めて大きな実利となるのが助成金制度です。「両立支援等助成金(出生時両立支援コース、介護離職防止支援コースなど)」の申請にあたっては、一般事業主行動計画を適切に策定・届出・公表していることが基本支給要件として組み込まれています。計画を正しく運用することが、返還不要の助成金受給へ直結する仕組みとなっています。

一般に知られていない盲点とネットの誤解|罰則や公表義務の実態
インターネット上の相談窓口や知恵袋などでは、「未提出でも罰則がないから放置しても問題ないのではないか」といった誤った言説が見受けられます。しかし、これは極めて危険な認識です。
確かに届出を行わなかったことに対する直接的な刑事罰や即座の過料規定はありません。しかし、労働局による是正指導や報告徴取の対象となるほか、指導に従わない悪質な企業については企業名の公表措置が規定されています。インターネット上の情報拡散スピードが速い現代において、コンプライアンス違反企業として公表されることは、新卒・中途採用の致命的な停滞や企業イメージの失墜に直結します。
【プロの結論】形骸化させない企業と形だけで終わる企業の決定的な違い
組織社会学や人的資本経営の観点から見ると、一般事業主行動計画を「単なる義務的手続き」として処理する企業と、「組織改革のトリガー」として活用する企業では、数年後に人材獲得力で埋めがたい格差が生まれます。おすすめできる企業姿勢は、自社のリアルな課題(離職率や特定部署の過重労働)に真摯に向き合い、身の丈に合った実行可能な目標から着手することです。表面的な数値合わせのために達成不可能な目標を掲げることは、現場の疲弊を招くだけであり厳に慎むべきです。
【一般事業主行動計画】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:従業員数が90名から105名に増えました。いつまでに行動計画を届け出る必要がありますか?
A1:常時雇用労働者が101人以上となった時点で策定義務が発生します。遅滞なく自社の課題分析と行動計画の策定を行い、社内周知・公表を経て所轄の都道府県労働局へ届出を行ってください。
Q2:次世代法と女性活躍推進法の計画は、1つにまとめて作成・届出できますか?
A2:はい、「一体型」として1つの行動計画書に両法の内容を盛り込んで策定・届出することが可能です。ただし、それぞれの法律が求める必須項目(女性活躍推進法における数値目標の設定など)が漏れなく記載されている必要があります。
Q3:策定した計画の目標が達成できなかった場合、労働局からペナルティを受けますか?
A3:目標未達成そのものに対する法的な罰則はありません。ただし、なぜ未達成だったのかの要因を分析し、次期の計画策定に活かすPDCAサイクルを回すことが求められます。なお、くるみんやえるぼしの認定取得には目標達成が必須条件となります。
まとめ:法改正動向を押さえ企業価値を高める行動計画へ
一般事業主行動計画は、法令遵守のための形式的なペーパーワークではなく、激動する雇用環境の中で多様な人材を引きつけ、組織の生産性を最大化するための重要な経営戦略です。2026年現在の法制下において、101人以上の企業には厳格な運用が義務付けられており、中小企業にとっても将来を見据えた早期対応が優位性を生みます。
自社の現状を客観的なデータで分析し、実効性の高い目標を設定して「くるみん」や「えるぼし」認定を目指すことは、採用力強化と従業員のエンゲージメント向上という大きな果実をもたらします。まずは厚生労働省の最新ひな形を確認し、着実な一歩を踏み出してください。 (出典: 一般 事業 主 行動 計画(Yahoo!ニュース))